【解説】人生の経営戦略 自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20| 山口周|優先順位は「⓪時間」「①スキル」「②人脈」「③お金」

はじめに
今回は、山口周氏による一冊、『人生の経営戦略 自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』を紹介します。
本書は、以下のような方々に特におすすめです。
- 現状に満足せず、自己成長や自己実現を追求したい方
現状に甘んじることなく、常に新たな挑戦や学びを求めている方。 - 人生の大きな転換期を迎え、人生の戦略を見つめ直したい方
キャリアチェンジや独立、ライフスタイルの変化など、大きな決断を控えている方。 - 人生を戦略的かつ慎重に歩みたいと考えている方
長期的な視点で人生設計を行い、計画的に目標達成を目指したいのに具体的な方法がわからない方。
本書と著者の紹介
本書は、「人生」を「経営」ととらえ、経営戦略的思考を自己の目標設定や意思決定、キャリア選択などに役立てるための20の戦略コンセプトを紹介しています。
著者の山口周氏はボストンコンサルティンググループ、A.T.カーニーなどで一流外資コンサルで20年以上戦略策定や文化政策、組織開発などに従事してきたプロフェッショナルです。
そんな彼がビジネス現場で磨いた経営戦略を元にご自身で設計・実践してきた人生戦略を紹介してくれる1冊となっています。
山口周氏の主な書籍
- 『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』
- 『ニュータイプの時代――新時代を生き抜く24の思考・行動様式』
- 『武器になる哲学――人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50』
本書では、人生の様々な問題や課題に対して、経営戦略の視点から合理的かつ効果的な解決策の提示だけでなく、山口氏の幅広い教養による深い例題が提示され、人生の実践につながっています。その一部をご紹介します。
本書の解説
目指すべきは「中庸な人生」を歩むこと
本書において、最近各メディアで紹介される人生論は、二極化していることを指摘しています。
- 「マキャベリ的人生論」(成功至上主義)
- 仕事の成功を第一に考え、プライベートの充実を犠牲にする。
- メリット:社会的・経済的に成功しやすい
- デメリット:プライベートを犠牲にした結果、幸福を感じにくい。
- 「ルソー的人生論」(幸福優先主義)
- プライベートの充実を重視し、仕事での成功を二の次にする。
- メリット:自分らしさを重視するが
- デメリット:経済的に不安定になるリスクがある。


この二つの人生論は理解しやすい一方、極端かつ明らかにメリット・デメリットが存在しています。
そこで本書では、アリストテレスの「中庸」の概念が紹介されています。
中庸とは、極端を避け、適度でバランスの取れた状態を指します。山口氏は、人生においてもこの中庸を意識することで、成功と幸せをハイレベルに両立し、「ウェルビーイング」な状態を目指す重視しています。
ですが、二極化された人生論が語るように、成功と幸せは相反するように思えます。どのようにして両立すればよいのでしょうか。
人生にイノベーションを加える
成功と幸せを両立するため、人生にもイノベーションが必要であると説いています。人生における「価値の最大化」とは、自分のスキルや知識を活かして新しい価値を生み出すことです。
例えばユニクロは「高品質×低価格」という一見矛盾した要素を両立し、成功を収めました。人生においても、「自由×安定」「挑戦×安心」など、相反する要素を組み合わせることで独自の道を切り開けると説いています。
それでは、人生のイノベーションを起こすための4つのステップを紹介していきます。
人生の戦略:4つの資本と順番
人生を通じて成功と幸福を両立するためには、以下の4つの資本を順番に積み上げることが重要です。
⓪ 時間資本(自分がコントロールできる時間を確保する)
- 全ての源泉です。あらゆる資本を手に入れるためには、まず「時間」が大切です。
- 日頃の雑務に忙殺されず、まずは「時間」を確保しましょう。
① 人的資本(スキル・経験・知識)を身に着ける
- 確保した時間資本で、経験を積み、専門知識、スキルを深めていきます。
- ただ仕事を無心でこなすのではなく、なんの経験が得られるのか、どんなスキルを習得できるかを意識することが大切です。
② スキルを武器に、社会資本(評判・信用)を蓄える
- 蓄えたスキルと経験は次第に評価されます。培った経験とスキルを活用して、信用・評判・ネットワークを獲得していきましょう。
- 例えば、社内では管理職への出世や、社外では転職、登壇依頼などです。
③ 社会資本が金融資本(お金)を生み出す。
- 社会的信用はお金に代わっていきます。
- 信用と評判を武器に役職に就くことができ、ネットワークを活用して起業や副業をすることができるようになるでしょう。
この、時間資本、人的資本、社会資本、金融資本をバランスよく増やしていくことで、成功と幸せを両立した「ウェルビーイング」な人生を実現することができます。
しかし、この順番を間違えると失敗します。例えば、時間を確保できなければ、スキルを身につける余裕は作れないでしょう。スキルがないのに人脈作りを優先すると「中身のない交流」に終わるだけで、結果を出せないまま終わってしまいます。
どんな会社で働くべきか
本書では、最短で人的資本、社会資本を獲得するには「キャズム直前の会社」で働くべきと提言しています。
キャズムとは?
- 「イノベーター理論」に基づき、新しい技術やサービスが市場に広まる前の段階。
- これを超えたタイミングで急成長が始まる。

なぜキャズム直前が狙い目なのか?
理由1: 急成長に乗ることで、圧倒的な成長機会を得られる。
例えば、LINEやメルカリはキャズム前に参入し、普及の波に乗ることで大企業へ成長しました。この急成長の波に乗ることができれば圧倒的な成長機会を得ることができるのです。
理由2: キャズムは1度しか訪れない。
一方で、キャズムを逃すと、業界の成長が鈍化し、飛躍的な成功の機会が少なくなります。貴重なチャンスといえるでしょう。
しかし、キャズム直前の企業には大きなリスクがあります。キャズム直前には数多くの企業が「深い溝」に落ちていき事業化に失敗するのです。そのため、自身の価値観やライフスタイルに合わせて選択することが非常に重要です。「中庸」な人生を目指すためにも慎重に判断しましょう。
おわりに
『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』は、人生を戦略的に捉え、自己実現を目指すための具体的な指針を提供する一冊です。山口周氏の豊富な経験と知識が詰まった本書は、人生の転換期を迎えている方や、慎重かつ戦略的に人生を歩みたいと考えている方にとって、貴重なガイドとなるでしょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。